こんにちは。
歯科衛生士の華山です。
前回は「誤嚥性肺炎」についてのお話を書きました。
今日は「ご飯を飲み込む(摂食嚥下せっしょくえんげ)」メカニズムについてです。
食べ物を「見て」から「噛み」「飲み込む」の一連の流れを摂食嚥下(せっしょくえんげ)といいます。
液体や食品を指示に合わせて嚥下(えんげ、飲み込むこと)したり咀嚼(そしゃく、噛むこと)の後に意識して嚥下する「摂食嚥下の過程」を5期に分けて考えます。
①先行期
②準備期
③口腔期
④咽頭期
⑤食道期
今回は①の先行期(認知期)についてお話しします。
①先行期
食べ物をみて、硬さ・味・温度・におい・口へ運ぶ量や速さ・噛む力、さらに手で触った時の触覚、食器の音などを認識し、摂食行為という自分の過去の経験や記憶と結びつけます。食感を感じ、唾液の分泌、消化器の運動などにつながる大切な段階です。
先行期に問題が生じると、食物を食物として認識出来ず食動作が始まらない、疾患により嗅覚が障害されて食欲と結びつかない、自分の適切な食事ペースが分からずどんどん口に食物を詰め込んでしまうなどの様子が見られます。
さて、お気づきの方もいらっしゃったかもしれませんが、「過去の体験や記憶と結びつけて」摂食行為が行われるのです。では、それはいつなのでしょうか?
生後12ヶ月から15ヶ月頃に「自食準備期」「手づかみ食べ獲得期」という時期があります。
「自食準備期」とは
「自食」とは自らの手を使って食物を口に運び、その食物を口唇や前歯で摂りこむことです。この時期はおもちゃを口の中に入れたり、食物に手を伸ばしたりと自発的な行動が多くなり、物を口に運ぶ事を学習していきます。
「手掴み食べ獲得期」とは
「手掴み食べ」は、食物を手で掴み、口に運び口唇、舌、顎の動きと連動させて行うことです。この時期になると、始めは手のひらで食べ物を押し込んだり、指が口に入ってしまうような動作が見られます。また「口が迎えに行く」「こぼす」「横を向いて摂りこむ」などの動作も見られます。
だんだんと上手になるに従い、顔は正面を向き手指により口の中央部に食物を運ぶことが出来るようになり、手で押し込むのではなく前歯で噛み切るようになります。こうして一口の量を調整できるように目と手と口の協調運動を学習すると同時に、前歯が受ける感覚から、食物の硬さを感知して硬さに応じた口の動きを引き出せるようになります。
このように私たちは歯が生えて自分で食べようとする時期を迎え、初めて自分で食べる事を学習しているわけです。普段何気なく食事をしていますが、学習の賜物だったんですね!子供の頃からいろんなものを食べ、体験する事は、生涯食事をしていく中で大切な役割を果たしていると言えます。
次回は摂食嚥下2「準備期」についてお話しします。